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稲本正さん

宝の山である森に生かされている人類

オークヴィレッジ代表
https://oakv.co.jp/index.html

出典:平成23年2月、生長の家本部における環境教育研修会における講演(“いのちの環”平成23年8月・No17に掲載)


森がもたらす空気、水、食物

 私は37年前、飛騨高山の森に移り住んだ者ですが、始めに、森の大切さの基本からお話ししたいと思います。
 人間は「空気」「水」「食物」の3つがないと生きられません。その基本である空気から言いますと、人間はCO2を出して酸素を吸いますが、この酸素はほとんどが森の中の植物から来ています。かつては、海のいろんな藻類が一所懸命酸素を出してくれていたわけですが、人間がどんどん環境を壊してしまったので、海の中からあまり酸素が出てこなくなったのですね。
 次に水ですが、地球は水の惑星と言われているのに、実のところ水の97.2%が海水です。残りの2.8%が陸上にある淡水ですが、その9割は南極や北極などの氷で、人聞が飲めるきれいな水は、多めに見ても、水全体の0.01%ぐらいしかないといわれています。
 では、そうしたきれいな水を作っているのは何かというと、森なのです。雨が森に降ると、木は枝葉で雨を受けて、幹の中や根っこの下に貯めていく。この水がきれいな水で、森が作ったきれいな水がないと、私たち人間は生きられないのです。
 次に食べ物です。私の住んでいる飛騨高山には、谷川が流れていて、その水はミネラルの多い、きれいな水なので、おいしい農作物ができるのですね。
 牡蠣(かき)の養殖をしている友人がいます。一時、赤潮とかヘドロなどで牡蠣が全然採れなくなったことがあり、調べてみたら川から流れてくる水の状態が悪いことが分かった。そこで、川の水をよくするには森に木を植えるしかないと、彼は20年近く前から一所懸命、山に木を植えています。
 森の木や葉っぱから出るミネラル分を含んだ植物プランクトンが、水となって川に流れ、それが海に運ばれていって動物プランクトンの餌になり、それを牡蠣や魚などが食べるということになるんですね。
 ここまでが前座で、ここから本格的な話に入ります。

レッドゾーンに入ったCO2・・・豊かな森が支える文明生活

 有名なグラフ(リンクの画像参照)があります。過去のCO2排出量の変化を表したグラフですが、これは南極の氷の層を調べると分かるのですね。南極の氷って昔から積み重なった層になっているので、その層ごとに調べると、CO2の量がどのように増減してきたかが分かるのです。
 それによると、CO2は40万年ぐらい前から、大体180~280ppmの間で変化していました。ところが産業革命以後は、たった200年のうちに急激に増えて、今は380~390ppm、所によっては400ppmに達していて、完全にレッドゾーンに入っています。
 私は昔、大学で原子物理学を専攻していた者ですが、このような急激な上がり方をするCO2の観測記録が公表されたのを見て、「あっ、これはまずいな」と思ったのですね。今のように、人類が化石資源をどんどん使っていくと、限界にぶち当たって危なくなる。それで飛騨高山に移ることに決めたのです。
 今、世界で一番、CO2を排出しているのはアメリカですが、中国やインドがこのまま経済発展していくと、ますますCO2の排出量が増え、地球がいくつあっても足りなくなるのです。
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(文中にあるCO2濃度のグラフ)

 しかし、残念なことにCO2は、人間が作る機械では減らせません。植物の力には勝てないいのです。植物は、人間には必要のないCO2、そして水と太陽熱で自分自身を作れる。CO2を葉っぱ自らが吸収し、そこに水と太陽熱が加われば、葉っぱは増え、さらにCO2を吸収して減らしてくれるわけです。
 人間は動けば動くほど、エントロピー(※)が増大し、環境を汚していきますが、植物は働けば働くほどエントロピーを下げ、環境をきれいにしてくれるのです。こうした作用のことを「ネゲントロピー」と言います。
 人間の場合、1人が呼吸をするだけで、そのCO2を吸収するために、1年間で15~6本の木が要るのです。逆に言うと、15~6本の木を植えていない人は酸素を吸っちゃいけないことになる(笑) 。もっと恐ろしいのは、文明的な生活を送るようになると、日本人の場合、年間370本の木が要る。インド人の場合は44本ぐらいでいいのですが、これがアメリカ人になると、800本近くを必要とするのですね。
 こうしたことからも、豊かな森がない限り、人類は文明的な生活を送ることはできないということが分かると思います。

※エントロピー:熱力学で、物質の状態を表す量の一つ。密度・温度・圧力の関数で表し、無秩序の程度を示す尺度として用いられる

森に必要な手入れ・・・木で物を作ればC02の削減に

 実は、日本には森林がものすごく多くて、国土の67%が森林です。これは世界的に見てもすごいことで、データがきちんとある国の中では、日本は世界で3位、悪くても5位以内だと言われるほど森が多い。
 これは素晴らしいことです問題点もあります。それは、その森のうち、人の手がまったく入っていない原生林が2.3%しかないということです。残りの97.7%は、一度ぐらいは木を切ったという森ですね。日本人は勤勉なので、山の奥の奥まで入って木を切り、その代わりスギ、ヒノキなどを植えた人工林が41%もあります。
 これは、戦後、木造の家を早く多く建てなければいけなかったという事情が背景にあるのですが、残り50%以上は二次林で、一度切った後に放置した森です。こうした森も早く手入れしなければいけないのですね。手入れをしない森はどうなるかと言うと、木の根っこが浮き出て、根っこと根っこ、枝と枝がぶつかり日が差さなくなって木が育たなくなります。
 ですから適度に手を入れて、日が差すようにし、年寄りの木と若い木と子どもの木とを混在させるようにすると、人間と同様、うまい具合に家族が形成されるようになって、いい木が育ち、いい森になるのですね。
 そういう問題はあるにしてるも、なにせ国土の67%が森ですから、木自体はあり余っている。今ある木を有効利用するだけでも、環境問題のいくつかは解決すると言われているくらいです。
 ところが、森の手入れもせず、切り出すのにお金がかかるので海外から買っている。かつては94%も自給していたのに、今は20数%。輸入に使うエネルギーをウッドマイルズ、ウッドマイレージといいますが、その点でも日本は断トツに高い。

 私たちオークヴィレッジでは、自分たちの森を手入れするだけではなくて、木を使っていろんなものを作っています。私たちの基本的な考え方は「100年かかって育った木は100年使えるものに」ということです。これは、そんなに難しいことではない。
 法隆寺は建立されてから1400年も、もっているわけです。日本の伝統技術をもってすれば、木をうまく使うことによって、それくらいもつものが作れるのです。
 木の製品に関して言うと、木の循環モデルというのがあります。例えば大きな木を切って、それで長持ちする物を作り、それと同時に木を植える。木はCO2を吸収するので、木で作った物を壊さないように長持ちさせれば、CO2は固定されたままになるわけですね。つまり木で物を作ることで、空気中のCO2を削減できるのです。プラスチックや金属ではそうはいきません。木は使うことでCO2を減らすことができる唯一のものです。

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オークヴィレッジで作られている木を使った製品の数々

本当の情報は森にある

 生長の家本部事務所は、平成24年度中に山梨県北杜市八ヶ岳南麓の森の中に移転するということですが、生長の家の皆さんは、新しいライフスタイルを受け入れる人、つまりイノベーターと言っていいと思います。大体人間は、昔のことをそのままやろうする人が多く、新しいことをしようとすると、反対する人がほとんどなのですね。
 しかし、最初の人がやったことがうまくいくとみんなが後をついてくるようになる。ですから最初は大変かもしれませんが、人類が生きていくには森がなければしようがないわけでから、森の中にいくことの意味がだんだん理解されていくと思います。
 第一、都会にいて得られる森の情報というのは誤りです。今、私たちが生活する上で得られる情報というのは、テレビなどの映像を通した視覚によるものが圧倒的に多く、次に音として聞く情報が2番目ですが、森の香りがしない情報など情報としては間違っているのですね。
 こうした誤った情報を正しいと思っていると、人間はどこかおかしくなってくるのです。
 森の中に行けば、ヒノキ、クロモジ、ニオイコブシなど、体を元気にし、リラックスさせる効果のある木がたくさんあるわけで、木は物を生み出すだけでなく、入浴剤、シャンプーなどいろんなものに使えます。森はまさに人類を生かしてくれる宝の山なのですね。生長の家の皆さんもこうしたことを理解された上で、森の中に行かれて、生きた本当の情報を得ていただきたいと思います。

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オークヴィレッジ本社のある岐阜県高山市清見町

※体験者の年代表記は体験当時の年代となります。


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